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掬水荘、要荘等明渡請求訴訟の勝訴判決のご報告

掬水荘、要荘等明渡請求訴訟の勝訴判決のご報告

けやき法律事務所 
弁護士 折田泰宏
弁護土 浅井 亮
一、はじめに
 宗教法人大本(以下「宗教法人」と言います。)が教主直美様に対して平成二十一年七月に訴訟を提起した掬水荘、要荘等についての建物明渡請求訴訟について、平成二十四年十一月二日に上告棄却、上告受理申立について不受理の決定がなされ、直美様の勝訴判決が確定しました。
 私どもけやき法律事務所の弁護士は、この訴訟について直美様の代理人として関わらせていただきましたので、以下、この訴訟の概要と経過についてご報告させていただきます。
二、訴訟の概要
 宗教法人は、昭和五十七年五月二十六日、大本総代会を開催し、教主継承規範に基づき直美様の教嗣としての地位を取り消して三諸聖子氏を教嗣に決定したとし、これに伴い直美様は教嗣が居住するべき建物である掬水荘、要荘等の建物を使用する権利を喪失したとして建物の明渡しを求めました。
 これに対して、我々は、直美様の四代教主としての地位は、「大本神諭」及び「霊界物語」に基づいており、聖師出口王仁三郎が審神(さにわ)したものであり、生まれながらに定められたものであって、事後的に変更できるものではなく、現在も四代教主の地位に基づいて掬水荘、要荘等についても使用する権限を有している、と主張しました。
 また、この訴訟は一見すると建物の明渡しを求めるという当事者間の権利関係に関する訴訟であるものの、その本質は直美様が神定四代教主であるかどうか、という点に尽きるものであり、宗教上の信仰・教義に関わるものであるから裁判所において判断し得るものではないと主張しました。そして、過去の最高裁判例においても、建物の明渡しといった当事者間の具体的な権利義務の存否に関する訴訟であったとしても宗教上の教義・信仰の内容に立ち入ることなくして判断することができないときには、裁判所による解決に適しないとして却下する(中身に入らずに門前払いする、という意味)という判断をしていましたので、本件でも請求を却下すべきであるとの主張をしました。
 この却下を求める主張に対して、宗教法人は、教嗣を取り消した点については、手続に則ったにすぎず、教義や信仰に関係なく判断できるため、却下すべきではないと反論しました。
三、訴訟の経過
 訴訟の争点は上記のような内容でしたが、本件請求が却下されるかどうかが一番の争点となりました。
 そして、この争点を判断するには、この明渡訴訟の本質がいかに教義・信仰と深くかかわっているかということを示す必要がありました。
 そこで、我々は、直美様が生まれながらにして四代教主となるべき地位を有していることを「大本神諭」「霊界物語」だけではなく、聖師の詠まれた歌や二代教主の言葉なども引用しながら示すとともに、直美様が四代教主であることについて多くの信者が確信しているという実態も示すことによって、本件がまさに教義と信仰に関わる問題であるということを示していきました。
 京都地裁の第一審は、訴訟提起から一年余りが経過した平成二十二年十月二十二日に結審し、平成二十三年一月十二日に判決が出されました。
 結果は、本件は裁判所が判断すべき事案ではなく請求を却下するというもので、こちらの主張が全面的に認められました。判決の中で、裁判所は「神定四代教主との主張はこの訴訟のために作出された虚偽の主張だ」との宗教法人の主張に対し、あくまで外部的な観察の結果であり特定の宗教的意義付けをしようとするものではない、と断りながらも「大本教団内において被告(直美様)が…四代教主となることが確定した者とみなされていたとみる余地がないとは決して言えず」とし、直美様を四代教主と仰ぐ信徒は本件訴訟より前から同趣旨の主張をしていた、との認定をし、宗教法人の主張を排斥しました。
 続いて宗教法人より平成二十三年一月二十四日付で大阪高裁に提起された控訴審において、宗教法人は、原審での主張に加えて大本信徒連合会がすでに宗教法人とは全く独立した別の団体になっていることから、直美様は宗教法人から離脱しており、教主たる地位を争うことはできないとも主張しました。しかし、控訴審は、この点について直美様が祭祀の中心地である梅松苑を本拠として活動していることや、大本信徒連合会が宗教法人の信者を構成員としていることなどから、直美様が自らの意思で独立した宗教団体の主宰者となって独自に宗教活動をしていると評価することはできない、と判断しました。
 また、教主継承規範については、教主であってもこれに従わなければならず、教主継承者の地位を取り消された場合にはこのことを争う余地はないとの主張、教主継承者の地位の取消しについては裁量権の濫用とならない限り適法、有効であるから争う余地はないとの主張なども新たに追加されましたが、控訴審ではいずれも理由がないとして排斥されています。
 これに対して宗教法人は、平成二十三年十二月八日、最高裁に対して上告及び上告受理申立をしましたが、最高裁は、平成二十四年十一月月二日、上告棄却、上告受理について受理しない旨の決定をし、これにより直美様の勝訴が確定しました。
四、訴訟を終えて
 以上のように、この訴訟の結論としては、訴訟の内容に踏み込まずに却下するというものでしたが、実際のところは直美様が生まれながらにして四代教主であったことについて、聖師が審神していることや、直美様が信者の皆様から篤い信仰を受けているという事実があることを前提として示された判断であったと言えます。
 われわれ弁護士の仕事は、直美様の代理人として、これらの事実を裁判所に提出し続けることだけであり、あるべきところにあるべきものが納まったということなのかもしれません。とはいえ、このような結果になったことについて安堵しています。
 しかしながら、この判決によってすべてが解決したわけではありませんし、宗教法人との関係は予断を許しません。これからも直美様の下で気を緩めることなく団結していく必要があります。
 私どもけやき法律事務所も引き続き皆様を支えていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
以上
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